世界には 科学的真理と 宗教的真理がある
『日本の名著』第49巻 河上 肇
経済学者・河上肇(1879─1946年)が、
晩年の1937年、小菅刑務所で書いた『獄中贅語』に
この二つの真理を指摘する。
ここには日ごろ単純に、
真理は一つと片づけがちなわたしたちの思考を強く
問いかえさせるものがある。
科学的真理とはもちろん客体的真理のことで、
自然科学や社会科学を指すが、
いま一つ人間が自らの生を尽くしきる主体の課題として
宗教的真理が厳に存在する、
と唯物論者の立場から説くだけに、その論説には引きつけられる。
その意味でこの「宗教的真理」は、今日のことばでいえば、
「実存的真理」あるいは「根源的真理」とでもいうべき内容だろう。
それは人間の幸せが単に欲望の満足では尽くしえない
人間存在の深みを告げているからだ。
2004年7月25日
(前住職)