自分を映す鏡とは

 

自分を映す鏡とは 外の世界や 他者の存在だ

                        高村 薫

 近年、自殺者が年間3万人を越え、

その未遂者を加えればその数は十倍にもなろうかといわれる。

 自らいのちを絶つという心情は、

もちろん当事者自身にしかわからない。

だが、単にそうした現実をわたしたちが

外にながめて(なげ)いているだけでよいのか、

ふと考えさせられる。

 自死という現実から自問すべきこととして指摘した

先人の次のことばが胸を突く。

「人間はひとりでも愛することのできるひとがいるかぎり、

また自分のなすべきことが見えているかぎり、死ねない」。

ここから一つは連帯感が、一つは使命感が、

無言のうちにわたしたちに問われていることを思う。

この問いと向きあうとき、自死は他人(ひと)ごとではなく、

自分もその予備軍の一人だと気づく。 

2004年6月27日

前住職

                      

This entry was posted in 池田勇諦(前住職)の話. Bookmark the permalink.