中日新聞 〈人生のページ〉 ⑥

無限他力はどこにあるのか 自分の天性において これを見る

自分の天性は無限他力の表われ



                     清沢 満之(まんし)

「了(さと)る」という場合、そこには了る者と了られる真理(法則)の二つの契機がある。この二つを別のように考えるのが、わたしたちの無明なのだ。そのかぎり真理と自分は追いかける関係となり、つねに手のとどかぬことを歎くほかない。

だがその関係が一転して、逆に真理表現の尖端(せんたん)になることが了ることだ。その意味で真理を了るといっても、真理と了る者とは別でない、一つだ。

一つだということは、真理が一つの固定したものでなく、どこまでも現実にはたらく作用だということ。だから真理を了ることは、真理のはたらきのほかに真理を了る者はなかったことの了知だ。満之のこのことばは、それを告げていないか。

2001年10月21日

This entry was posted in 池田勇諦(前住職)の話. Bookmark the permalink.