人生列車

(本に紹介されていた文章です。そのまま転写します。 住職) 

発車駅の東京も知らず、

横浜もおぼえがない。

丹那トンネルを過ぎたところで、

うす目をあける。

静岡へんで突然、

乗っていることに気づく。

 

そして名古屋の5分間停車のあたりから、

窓の外を見てキョロキョロしはじめる。

この列車はどこへ行くのかと慌てだす。

もしそんな乗客がひとりでもいたら、

みな吹きだすに決まっている、

その無知な乗客を哀れむにちがいない。

ところが、人生列車は全部の乗客がそれなのだ。

(吉川英治)

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