死を求むるに得ず 生を求むるに得ず
『大無量寿経』五悪章
かつて過労に倒れ、妻として、母として、嫁として、
何一つその責任を果たすことができなくなった女性から、
「もうわたしは生きている意味がない、死にたい
ともらされ、あまりの現実のきびしさに
絶句したことであった。
そのとき思いだされた次のことばを告げたのが
精いっぱいだったことを想起する。
「人生には避けられないことが二つある。
一つは死ぬこと、もう一つは生きることだ」。
死の不可避さは誰しも「そうだ」と言う。
だが、それがほんものか否かは、
「もう一つは生きることだ」の見開きの有無だろう。
自分の都合を超えて、
あたえられたいのちの真実に
めざめることがなければ、
「生きていくことも、
死んでいくこともできない」のだ。
経典の叫びを聞こう。
(前住職)
2004年12月12日