「病という名の あなたへ」

「病という名の あなたへ」

              福井県三方町編『のこすことば』

 

 標記の言葉は、高校一年の高間史絵さんという

一少女の書いた作文のタイトルである。

一読して、その豊かな感性と自分を見失わぬ主体性に驚いた。

 一つの病を引きずる彼女が、周囲の見舞いや励ましに反撥(はんぱつ)し、

病を憎み続けながら、しかもその歩みの中から、

病と対話するに至った精神的深まりには、思わず頭がさがる。

 彼女の心を開いたのは、

「こんなに世話のかかる私を、

そう、病をひっくるめた私の全てを、

誰もが大切に思ってくれていることを、私は強く感じた」、

という家族の愛であったことが思われる。

 しかもそれが何よりも病と一つになる生きかたを

彼女のうえに開いていることだ。

覚醒(かくせい)による解放という「救い」を、彼女のうえに見る思いがする。

( 2003年9月21日 中日新聞「人生のページ」より)

前住職

 

                      

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