朝の来ぬ 闇夜を告げる 除夜の鐘
不詳
往く年をふりかえり、来る年に思いを馳せる「除夜の鐘」が、
今年もあと2週間になった。よく“一年の罪ほろぼしに、鐘を
撞きに行くか„などという声を聞く。
しかし除夜は、わたしたちの無明煩悩を闇夜にたとえ、それを除く、
つまり覚知させる(鐘)ことをいう。
わたしたちから消除できない煩悩は、
却ってそれにめざめる痛みだけが、
煩悩に居直れない生きかたを開くからだ。
NHKの朝ドラ『さくら』の中で、
「煩悩によって四苦八苦するから4×9と8×9との和が百八だ」
と撞く数のことにふれていたのも、まさにこの25時の夜を告げる意味だ。
ならば、一般に忘年といっていることも、
刻年でなければ、着実な新年とはならないだろう。
(2002年12月15日中日新聞「人生のページ」より)