善人なおもて往生をとぐ いわんや悪人をや
『歎異抄』第三条
よく知られた一文であるが、ここにいう「善人・悪人」とはいかなる意味なのか。日ごろ当時の歴史的・社会的視点からの解釈が際立つが、それにさきだって何よりも、この第三条の文面での意味を確かめたい。
「善人」については「自力作善の人」とあり、「悪人」については「他力をたのみたてまつる悪人」とある。つまり善人は自分の意志でいかようにも善行を積みうる、また積んでいると思っている人。悪人はそうした善人意識が、いかに自他を欺き傷つけあうエゴイズムかを信知せしめられた人。
ならば、善人の善は偽善の善であり、悪人の悪は偽善の偽としてその自覚的悪人をさしている。
やっぱりわたしたちは、善人だ。
2003年8月24日