自己とは何ぞや これ人生の根本問題なり
清沢 満之
「仏教は自己を明らかにする道」という。だがその場合、自己とはどんな自己をいうのか。
決して社会から切り離した抽象的な自己のことではない。無数の関係の総合体を生きる歴史的、社会的存在としての、具体的なこの自己なのだ。
だから究極的なものから自己を知らされることは、社会と分断した自己反省のたぐいでもなければ、逆に自己から切断した社会批判のそれでもない。
自己のすがたを社会のうえに見いだし、社会のすがたを自己のうえに見ることなのだ。自己は内なる社会であり、社会は外なる自己だから。
その意味で、真の自己批判は同時に社会批判となり、社会批判は同時に自己批判に回帰する。それが「仏教は内観の一道」といわれる「内観」の意味だ。
2002年6月2日