中日新聞 〈人生のページ〉 ⑦

勇気こそ 地の塩なれや 梅真白

                       中村草田男

 

「地の塩」は『聖書』マタイ伝によるが、塩がすぐれた特性をもつことから、転じて広く社会の腐敗を防ぐに役立つもののことをいう。

俳人・草田男は人間の純なる生きかたを、「勇気」に見すえていたことが、「梅真白」に、殊のほか際立つ。

だが、一口に勇気といっても、わたしたちの日常意識からは、暴勇か臆病かの対極しかない。「小事に大胆なる者は、大事に臆病である」のことばは、何とも身につまされる。

では、真の勇気とは何か。「ひたすら真理に従順たろうとする生きかた」だと、仏典は説く。つまり自分の現実から、逃げない生きかたのことだ。

ならば、それは逃げてばかりの自分を痛む知見にしか、成り立たない生きかたなのだ。

2002年2月10日

 

 

 

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