一生 風通しよくて 暮しましょう
曽野綾子『夫婦の情景』
主人公の麻生友彦には、ひとつの泣きどころがあった。
学生時代から髪がうすく、就職にあたって彼は“かつら„をつけることにした。
だが、結婚の年ごろになって幾度か見合いはするものの、
なかなかまとまらない。あるとき響子という女性と見合いをして、
デートに砂丘へ出かけた。とても心地よい風が頬をなでる。
彼女は思わず「帽子をおとりなさいよ」、と彼に言った。
仕方なく帽子だけをぬいだ彼に、
「麻生さん、こんどから帽子も何も頭にかぶらないで来てね。
一生、風通しよく暮らしましょうよ」。
ありのままの姿で、共に生きようという優
しいことばにふれた彼は、閉ざされた心が開かれ、
解放感に小躍りして、「風通しよく・・・・・・」がモットーになった。
2004年3月7日
前住職