簡素とは生命にとって非本質な部分を切り捨てて
生命の本質を顕わしていくことを意味する
『毎田周一全集』2
この「簡素」とは、いわゆる簡単・素朴・質素・粗末などといった印象のものではなく、むしろその根本にふれる質のことをいう。
「簡」と「素」。素は素地・素材の意味で、どこまでも欲望のままに伸びていこうとする。それだけに素地のままでは、収拾・統一がつかない。
そこに「簡」、えらぶ。えらび捨てることによる「このこと一つ」の見極めを提起しているのだ。
その意味で簡素は人生の統一を開き、
生活行動の優先順位とも具体化するだろう。
この点、現代のわたしたちがもっとも欠落、または苦手とすることだ。
だが、年頭にあたり、
“一年の計は簡素にあり„と、
この一語にこだわりたい。
(「人生のページ」 2003年1月12日より)