「いただきます」

 2014/05/28のメール

熊田光男さん社員さんへのメッセージより

「いただきます」

 何気ないこの言葉の意味を、もう一度考えてみたいものです。

 食肉加工センターの坂本さんの話です。

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ある日の夕方、牛を荷台に乗せた一台のトラックがやってきた。

 しかし、いつまで経っても荷台から牛が降りてこない。

 不思議に思って覗いてみると、10歳くらいの女の子が、

 牛のお腹をさすりながら何か話し掛けている。

 その声が聞こえてきた。

 「みいちゃん、ごめんねぇ。みいちゃん、ごめんねぇ……」

 坂本さんは思った、見なきゃよかったと…

 女の子のおじいちゃんが、坂本さんに頭を下げた。

 「みいちゃんはこの子と一緒に育てました。

 だけん、ずっとうちに置いとくつもりでした。

 ばってん、みいちゃんば売らんと、お正月が来んとです。

 明日はよろしくお願いします…」

 (もうできん。もうこの仕事はやめよう)と思った坂本さん、

明日の仕事を休むことにした。

 家に帰ってから、そのことを小学生の息子のしのぶ君に話した。

 一緒にお風呂に入ったとき、しのぶ君は父親に言った。

 「やっぱりお父さんがしてやってよ。

 心の無か人がしたら、牛が苦しむけん」

 翌日、しぶしぶ仕事場へと車を走らせた。

 牛舎に入った。

 坂本さんを見ると、

 他の牛と同じように、みいちゃんも、角を下げて威嚇するポーズをとった。

 「みいちゃん、ごめんよう。みいちゃんが、

肉にならんとみんなが困るけん。ごめんよう」

 殺すとき、動いて急所をはずすと牛は苦しむ。

 坂本さんが、「じっとしとけよ、じっとしとけよ」

 と言うと、みいちゃんは動かなくなった。

 次の瞬間

 みいちゃんの目から、大きな涙がこぼれ落ちた。

 牛の涙を坂本さんは初めて見た。

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「いのちを いただきます」

 自然に手が合わさりますね…

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